はじめに
かつてGIFのライセンス問題において Web 上が騒がしかったことがある。
素材提供サイトを中心に、一時はパニックと言っていいほどの混乱状態を呈した。
それはネット上にさまざまな流言飛語が飛び交い、正しい情報が伝わらなかったゆえのように思われる。
ここで、簡単ではあるがGIF問題についての要点を書いておきたい。
参考になれば幸いである。

GIFとは?
GIF (Graphic Interchange Format)とは、米CompuServe社が1987年に開発した画像形式である。Jpg形式と共にインターネットでは標準的に使われている。表示は256色までに限られ、フルカラー表現を必要とする写真等には不向きだが、動画/透過が可能・ファイルサイズが小さい・可逆圧縮という優れた特徴を持っているため、アイコンやイラストを表示する上で不可欠な存在となっている。
ちなみに、このページの「GIF問題の常識」というタイトル画像、そして壁紙もGIF画像である。

GIF問題の発端
事の発端は米ユニシス社が1996年に突如として、GIF関連の高額の特許料をフリーウェアを含めて請求すると宣言したことにある。
GIFという形式自体は本来フリーなのだが、LZW (Lempel Ziv Wilch)という米ユニシス社が特許を持っている圧縮アルゴリズムを使っていることが問題とされた。このLZWを使わない無圧縮GIFというものも可能なのだが、BMP形式とサイズがほとんど変わらなくなるため事実上無意味な存在となっている。

GIF問題の経過
そもそも米ユニシス社が当初、フリーウェアに関しては特許料の請求から除外するという発言を行いながら、1996年にその発言を撤回したのが問題であった。またその表現も、一括5000ドル(≒50万円)という高額な特許料を取り立てるという印象を与える乱暴なものであった。GIF画像を取り扱う素材サイトの多くがパニックに陥り、一部には突如としてサイト閉鎖に至るほどの混乱に陥ったのも無理ならぬ点がある。
起こった現象はサイト閉鎖だけではない。米ユニシスに対する抗議運動も活発化した。GIFを使わずPNG形式で代替していこう、というキャンペーンも精力的に行われたようである。

自分なりの私感を述べれば、最初にフリーなら使用OKと言いつつ市場に出回るのを待ち、十分に普及してから突如として特許料を請求するのはフェアなやり方とはとても言えない。米ユニシスはこの方針転換によって多少の実入りを確保できたかも知れないが、むしろこの行動によって失ったもののほうがよほど多いだろうと思われる。

一方、ネット上での反GIF運動とも言えるヒステリックな動きにも、つくづくウンザリさせられた。無用にGIFを貶めてみたり過剰にPNGを持ち上げてみたりと、いろいろ不正確な記述も横行していたようである(下図)。

後述の「将来の展望」を読んでもらえば理由は誰にでも分かるだろうが、フリーフェアがGIF作成・表示機能を再実装することはあっても、数年後にGIFの非実装が当然になることなどまずあり得ない。非実装にする意味がやがてなくなるからである。
著者の希望的観測――おそらくは願望――から書かれたこれらのいい加減な記述が、余計にGIF問題を混乱させた面は間違いなくあった。これはある意味米ユニシスよりもアンフェアな態度だと言えよう。

一般ユーザーにとっての影響
これは結論から言うとほぼ存在しないと言っていいだろう。一時期の大混乱が急速に終息したのはこのためである。
パッケージソフト(PaintShop、PhotoShop、ホームページビルダー等々々)の場合、メーカーが予め米ユニシス社にライセンス料を支払い済みである。
従って、これらの市販ソフトを使ってGIFを「作成」「配布」するのは何の問題もない。
一方、GIFの「表示」についてもほとんど問題ない。大抵は Internet Explorer 等のブラウザで閲覧することになろうが、 Microsoft などのブラウザをリリースしている会社も、ちゃんとライセンス料を米ユニシスに支払い済みだからである。

問題となる場合
ただし、パッケージソフトでない個人のフリーウェア等でGIF画像を作成する場合は、ライセンスに引っかかる。米ユニシスに当該特許料を支払っているハズがないからである。表示するだけでもLZWを回避する施策が必要となる。
さもなければ、米ユニシス社からライセンス料を請求されても文句は言えない。
数多の画像処理関連フリーウェアが、ある時期を境にして続々とGIF関連の機能を封印したのはこれが理由である(・・と言ってもどのソフトで製作したかは分からないだろうし、 Web 上の膨大なGIF画像をいちいち検証することは不可能だろうが)

完全フリーでGIFを製作するには?
これにはいくつか方法がある。

・IrfanView でGIF画像を作成
IrfanView はフリーウェアであるにもかかわらず、GIFの表示・作成機能がある。これは IrfanView の作者が、米ユニシス社のライセンスの及ばないオーストリア在住のためである。しかし、われわれ日本に居住している人間が、このソフトを使用しGIF画像を作成していいのか否かは、ややグレーゾーンに入る懸念をなしとしない。

・MS PaintでGIF画像を作成
前述の通り、 Microsoft は米ユニシスにライセンス料を支払っているため、 Microsoft のソフトウェアにおいてGIF画像を作成するのには何の問題もない。スタート⇒ プログラム⇒ アクセサリ⇒ ペイントで起動するMS Paintにも当然GIF生成機能がついている。


しかし、Windows98付属のMS PaintでいきなりGIFに変換するとひどい結果となる。
GIFでは256色以下しか扱えないので、フルカラーの画像は256色以下に色を減らす(減色)するのだが、Windows98付属のMS Paintの減色機能は存在しないも同然だからである。
例えば下の写真だが・・。

これを98のペイントでGIFにしてみると下図の如くになる。
(ただし、容量の関係でここではJPGに書き戻してある)

風景写真のようなフルカラーを前提とした画像をGIFにするのは無理がないわけではないが、それでも一目瞭然で「使えない」というのがお分かりいただけるだろう。
従って、元画像をいったんIrfanView・ViX等の多機能ビューア、もしくはPIXIA・PictBear・JTrim等のお絵かき(ペイントレタッチ)ソフトで256色へ減色処理をしてから、MS Paintに読み込ませGIF変換処理をするとよい。
(注:XP付属のMS Paintでは、かなりまともな減色機能が付属するようになった)

PNGを利用
PNGという形式は完全にフリーなので、そもそもPNGを利用しGIFを使わないという手もある。
ただ、PNG形式は (1) フルカラーだとjpgよりサイズが大きくなる (2) 256色に抑えたとしてもGIFのようにアニメーション機能がない(動画PNGであるMNGはまったく普及していない) (3) 透過処理が一般化していない
といった理由であまりGIFの代替にはなっていない。

将来の展望
とは言え、お騒がせのLZW特許についてはアメリカで2003年6月に期限が切れた。また日本でも2004年6月20日に期限が切れる。
その後はライセンス自体が存在しなくなるわけであるから、個人が作った画像処理ソフトでも何の問題もなくGIFを表示・作成できる日がまもなくやってくる。現にGIMPのアメリカ向けバージョンには、GIF関連の機能が追加プラグインで提供されている。GIFはアメリカにおいては、遂に自由になったのである。
日本もそうなる日を待ち遠しく思っている人々は、決して少なくないだろう。

付録
GIF(LZW特許)問題についてのリンク集。
★パテントサロン★ トピック GIF特許問題

2003年12月作成


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